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「でも、俺、お前のことどうしようもないくらい好きなんだもん…」
思いの外すらすらと出てくる言葉と、とどめを知らない涙。
ほんと最悪。
バカみたいだ。
「隣にいられるだけでよかったのに」
全部お前の所為だ。
しゃくり上げそうになるのを必死に堪えて、言葉を紡ぐ。
「だから…ん」
ふっと、有岡を睨みつけようと瞬間だった。
不意に唇に柔らかいものが触れた。
彼の睫毛の作る影がよく見える。
どういうこと。
文字通り頭の中が真っ白になったのがわかった。
「これがオレの気持ちだから」
1、2、3と数えて彼が離れる。
上手く咀嚼できない、彼の行為と言葉の意味。
「はぁ…?」
そんな声が漏れた。
思考回路は既にショート寸前で、到底使い物にはならない。
あまりのことに、涙すら引っ込んでしまいそうだ。
いま大ちゃんは俺に何をして、何を言ったんだ。
そんな疑問ばかりぐるぐると回っていた。
「だから、山田のこと好きだって言ってんの」
だからもう泣くな、なんて笑ってみせる彼。
何それ、意味わかんない。
ついさっきまで悩んでたのがバカみたいだ。
「バカ」
もっと早く言えよ。
先ほどよりもずっと勢いよく雫が零れ出したのがわかった。
「先のことは、ゆっくり2人で考えていこう」
そうはにかんだ彼は最高にかっこよかった。
不意に胸がきゅんと鳴る。
もう、好きすぎてばかになりそう。
ほんとに大ちゃんはいつもずるい。
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