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蛇口のハンドル部分を握る、左手の甲から飛び出した金属片。それが何かを理解するのに、時間は必要ではなかった。
刃である──。ハンドルから飛び出した刃が、手の平を貫き、こちらに顔を覗かせていたのだ。
その異常を感覚が理解するや否や、熱は瞬く間に激痛へと姿を変え、容赦無く襲い掛かってくる。
まるで競走馬だ。
開け放たれたゲートから一斉に飛び出し、幾重にも折り重なるようにして、痛覚が神経を鋭敏に揺さ振っていく。
それは甲から手首へ。そして下腕を侵食し、肘にまで到達すると、左腕全体が切り裂かれたような錯覚に陥り、表情は苦悶に歪んだ。
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