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『おいしいご飯は世界を救う』
なんて言葉を信じていたのはいつの頃だっけ。
そのご飯という言葉にデザートが含まれていないのが許せん。
と、そうじゃなくて。
美味しい物を食べれば誰でも優しくなるってお父さんは言うけれど、人は何かを憎んだりするし心が汚ない人も改心なんてしない。
手作りで栄養バランスの整った美味しい(鳥にとっては)ご飯をあげていたピーちゃんだって、先日鳥籠の扉をぶち破って脱走した。
動物に餌付けしたって逃げるときは逃げるんだよ...。
お父さんの口癖を思い出しながら私はピーちゃん探しを再開した。
ピーちゃんが消えたのは3日前。
学校から帰って来て自室の扉を開け放つと、真っ先に目に飛び込んできたのは無惨に壊された鳥籠。
城の主が消えたソレは、ただ寂しく空間が広がるのみだった。
私は咄嗟に窓を見た。
窓は全開ではなかったが、握り拳ほどの隙間が開いているではないか。
多分お母さんが空気の入れ換えに開けたんだと思う。
もしかしてここから逃げちゃったんじゃ...。
窓へと駆け寄りレバーをガッと押し上げる。
その瞬間、私の頬を掠るようにして何かが飛び出した。
バサバサと飛び立つ奴の後ろ姿は見覚えのありすぎるもの。
そう、ピーちゃんだ。
謀られた...!!
アイツは私が窓を開けるのを、虎視眈々と狙っていたのだ。
気付いた頃には時既に遅し。
「ピ...ピーちゃあああああああん!!!」
赤い夕焼けに、私の叫び声が虚しく響き渡った。
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