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紫と黒の…名状しがたい『何か』は、芝山に背を背けたまま手に持った物を一心不乱に食べていた。
静かに、迅速に。身の丈ほどもある饅頭を口内に収めていく。冷静な思考は人様の茶菓子を奪うなと呆れた気持ちを導いてはくるが、如何せん小さい『何か』は実在するかどうかも怪しい存在であり言葉にして良いものか躊躇われた。
数度齧り付き、頬(と思われるところが膨らんでいる)をいっぱいにしたところで咀嚼し飲み込む。
(俺、疲れてるんやろか…)
「あー!!!」
劈く悲鳴は件の生物と同じ色の人物で、どうしたと聞くまでもなく理由を叫んだ。
「僕のお饅頭が消えてる!!!」
「おや…」
「牧村さん、間違えて食べてませんか?!」
「何それ。人聞きが悪い」
「だってー!!」
周囲の騒ぎも何のその。芝山の視線の先では『何か』は一心不乱に饅頭を飲み込み続けていく。どうしたものかと悩む彼の視界に、灰色の袖が割り込んだ。
「これは?」
氏郷の声が添えられ、一同の緯線が集まる。
![image=488092828.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/488092828.jpg?width=800&format=jpg)
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