未知との遭遇

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襟元を摘み上げられた『何か』は足場を無くし不安定に揺れている。それでも食べかけの饅頭は両手でしっかり掴んでいる辺り、『何か』は食欲に従順らしかった。 ぷらーんと揺れる『何か』を見て、忠興が叫ぶ。 「僕のお饅頭―!!!」 「え、そっち?そっちなん?」 未知の生物を目の当たりにしての第一声は、忠興らしいものではあるが少し間が抜けていた。 食べ物の恨みは恐ろしいとは言うが…呆れ半分の芝山が息を吐く背後、瀬田も苦笑を浮かべている。 「細川君に似ていますね」 「何時の間に分裂したんですか?忠興殿」 「してませんよぉ。ってあぁあ!お饅頭―!」 騒ぎの間にも『何か』…小さい忠興(らしきもの)は両手で抱えていた饅頭をもりもりと飲み込んでいた。最後のひとかけらを飲み込み、満足げな顔で揺られている。 「………お、お饅頭…」 「いい加減にしろ、喧しい。というか細川、貴様は一体何をやらかしたんだ」 騒ぎを眺めつつ口を閉ざしていた古田だったが、忠興の呟きにやれやれと肩を竦めた。茶器を卓上に置き腕を組む姿勢は彼が説教を始める合図でもある。普段ならば押し問答と長引く彼の言葉に顔を顰めるところだが、声の主を振り返った彼等は呆気に取られた顔をしていた。 視線が古田の僅か上に集中する。
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