最初の御話。

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その日も古田と高山とが連名で案内を出していて、忠興は意気揚々と待庵へ向かっていた。道中で合流した氏郷と今回の趣旨を予想する。 「古田さんと高山さんですからねぇ…南蛮渡来の『何か』でしょうか?」 忠興と同じ予想を口にする氏郷と仲良く『何か』の正体を探りながら、慣れた道を進んでいった。新緑も定着して久しい街道には爽やかな風が通り抜けて肌を優しく撫で、弾む心を後押しする。 久し振りの待庵。相変わらず縁側で丸まっていた牧村が。挨拶をする二人の声に片手を伸ばして応える。機嫌は悪くないらしいと判断し、開け放たれた障子の向こう側に踏み込んだ。 目に飛び込むのは見たこともない光景だった。 「わぁ…!何ですか?これ!」 卓上に並ぶ数々の食器と複数の茶筒、硝子の小瓶に入った粉末。物珍しさと目新しさを兼ね備えた控えめながら見事な意匠は、忠興の瞳を輝かせるには十分だった。 飛び付かんばかりに駆け寄る彼を宥める事無く、氏郷は先に揃っていた面々に頭を下げる。 「遅くなりまして申し訳ありません。ご無沙汰しておりました」 「如何でも良いが黙らせろ」 呆れ返り忌々しげに呟く古田の手には、忠興の首根っこがしっかりと握られていた。
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