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勢いに巻き込まれた芝山の抗議の声が響く中、困った笑みを浮かべた瀬田が縁側を覗き込んで牧村を呼ぶ。身動ぎの後に立ち上がった牧村は見慣れた光景を一瞥し、僅かに肩を竦めて座った。何かを言う心算は無いらしい。
「皆さん揃いましたし、始めましょうか」
高山が静かに、しかし喧騒を沈めるには十分な響きで始まりを告げる。説教に入りかけた古田と芝山も言葉を止め、その忠興は氏郷の隣に陣取った。
余りの素早さに二人もそれ以上の追及を諦め、居住まいを正すと高山を向く。
「高山さん!これ何ですか?南蛮食器ですよね?」
ご丁寧に片手を上げて問う忠興に彼はまた笑みを向け、その中のひとつ…硝子の小瓶を手に取り掲げた。中に詰まった小豆色は外側の反射を際立たせると同時に己の存在を示している。
一同の視線が集中すると満足げに頷き、高山は話し始めた。
「今回、少し御縁がありまして…南蛮船が到来した際に同行されていた商人の方より、幾らか譲り受けたのです」
「幾らか?!こんな数を、全部ですか?」
「私と同じ趣向の…『私達』が楽しめそうな物を選りすぐって下さったのですよ」
かたんと音を立てて置かれる小瓶と入れ替わりで持ち上げられたのは…陶器だろうか?両の手に収まる大きさではあるが、茶釜から弦と口が延びた独特の風貌をしていた。
「…其れ、確か…」
「えぇ、南蛮の茶器です。」
心当たりを匂わせる氏郷の声に笑みを深めた高山が蓋を開ける。擦れる音は聞き慣れた響きで、其れの正体が陶器である事を告げた。
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