最初の御話。

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もう一方の主催である古田が手近にある茶筒を手に取り、牧村に手渡す。怪訝な顔で蓋を開いた彼は鼻先を掠める香りに目を見開き、瀬田へ中身を向けた。 瀬田は目を細め、懐かしさを含んだ声で答えを口にする。 「紅茶ですね」 「此れも合わせて譲り受けたそうだ。他にも得体の知れない茶葉もある」 言葉尻、別の茶筒を渡された芝山は中身を覗き込むと首を傾げた。 そもそも彼にとっては『茶葉』と呼ばれる物も珍しいわけだが、それを上回る違和感が彼を困惑させている。 「何や此れ…焦げ臭ないですか?」 「そういう物だ。まぁ、物は試しだな」 ざらざらと乾いた音が鳴る度に広がる香りは、芝山が言うとおり独特だ。蓋を開けたままの茶筒を受け取った古田がにやりと笑う。 「今回の茶会は此れだ。…各々、この中から好みの物を探し出せ」
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