茶会。

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比例して大きくなる笑い声の隙間、各々の感想が飛び交う。 「えー!何でそんなの苦いの飲めるんですか!?」 「え、美味しいですよ?茶菓子の甘みと合いますし」 非難にも似た忠興の声ににこやかに答えながら、氏郷は南蛮茶器(カップらしいが)から布の袋を引き上げる。深い香りと共に引き上げられ外気に晒されたそれは、深い闇色に侵食され赤墨に染め上げられていた。 香りに惹かれ口を付けたものの飲み込む事すらやっとだった液体を平然と嗜む氏郷に、忠興は次いで羨望の視線を向ける。 「流石です、氏郷さん!」 飲み物ひとつをとっても『憧れ』とは高められてしまうものらしい。呆れる周囲だったが敢えて言葉を向けず、茶器を次々と選択肢で満たしていった。 「忠興殿のは香りが不思議ですね。あまりお茶にないような」 「はい!何て言うんだろう…お茶自体に香りが付いてるみたいなんです。味は紅茶っぽいんですけど」 紅茶自体は口にした事がある忠興だったが、記憶とは異なる香りに首を傾げるばかりである。茶葉が違えば味も香りも違うとはいうが、あまりにも違いすぎた。 正体を探る背後で、また誰かが『好み』を探し当てる。 「牧村君、それ気に入ったんですね」 黙々と三杯目を作る橙に瀬田が微笑みを向けた。指摘には僅かに手を止めた牧村だったが、頷いて肯定を示すと黙々と作業を再開する。
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