茶会。

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氏郷が好んだものと似た色合いで、それよりもずっと甘い香り。南蛮菓子を思わせるそれは甘党の彼には好ましかったようだ。淹れたての熱を沈めるよう息を吹きかける牧村の隣で、独特の甘みが合わなかった古田は肩を竦める。 その様子を苦笑で認める瀬田の手には、小さな茶碗が納まっていた。紅茶のように茶器で茶葉を蒸らし抽出するのだが、彼が飲んでいる葉は抹茶の原料となるものだ。抹茶とは異なる味わいに最初は驚かされたものの、さらりとした喉越しと爽やかな風味は彼の胃にも優しい。 「ほんまに同い葉っぱなんですかね?」 「そうらしいが…こうも変わるものか?信じ難いな」 疑問を投げ掛ける芝山と首を捻る古田の手にある茶碗の中身もまた、原料は抹茶と同じだという。芝山の方は茶葉そのものが焙煎され、古田の方には焙煎された玄米が混ぜられている。火を通している為かどちらも香ばしく、しかし香りも後味も同じものではないようだ。 「高山さーん!このお茶何なんですか?」 「それも紅茶ですよ。茶葉とは別に香料が入っているのです。」 主催の一人である高山は、飲み慣れた様子で紅茶に口を付けている。初見の茶器に驚きはしていたものの使いこなしている仲間には流石と感心しているようで、無邪気に答えを請う忠興にも彼は嬉しそうに答えた。 「楽しんで頂けているようで何よりです」 「はい!珍しいものばかりですよねー。牧村さんが飲んでるのも良いなぁ、個人的に買いたいです」 最愛の奥方への手土産にしたいからと商人について問う紫に、高山は僅かに表情を曇らせる。
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