第1章

2/6
65人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「あたし、真司郎と付き合うことになったから。」 校庭のはじっこ。 大好きな彼女から急にそう告げられ、驚きで声が出なくなる。 「ごめんね。別れよう。」 いつもとは違う、真剣な顔。足早にその場から去っていく彼女を追いかけたい。だけど、体がそうさせてくれない。 振り返りもせず小さくなっていく背中。それをただぼーっと見送ることしかできなくて。やっとでてきた言葉。 「千晃…」 名前を呟くことしかできない。それでもやっぱり話したくて、ほんとの気持ちを知りたくて俺は走る。 校舎内ぐるぐるしても、放課後で人もまばらになった廊下を走り回る。 「どこだよ…」 「にっしー!」 振り向くと、同じクラスの宇野実彩子だった。 「千晃みなかった?」 「千晃ちゃん?知らないけど。」 そのとき宇野の顔が曇ったのに俺は気づかなかった。千晃のことしか頭になかったから。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!