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「あたし、真司郎と付き合うことになったから。」
校庭のはじっこ。
大好きな彼女から急にそう告げられ、驚きで声が出なくなる。
「ごめんね。別れよう。」
いつもとは違う、真剣な顔。足早にその場から去っていく彼女を追いかけたい。だけど、体がそうさせてくれない。
振り返りもせず小さくなっていく背中。それをただぼーっと見送ることしかできなくて。やっとでてきた言葉。
「千晃…」
名前を呟くことしかできない。それでもやっぱり話したくて、ほんとの気持ちを知りたくて俺は走る。
校舎内ぐるぐるしても、放課後で人もまばらになった廊下を走り回る。
「どこだよ…」
「にっしー!」
振り向くと、同じクラスの宇野実彩子だった。
「千晃みなかった?」
「千晃ちゃん?知らないけど。」
そのとき宇野の顔が曇ったのに俺は気づかなかった。千晃のことしか頭になかったから。
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