16人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「悪い。遅くなった」
二時を回った頃、
打ち合わせに出ていた室長が戻ってきた。
「山下、用意できてるか?」
「もちろん。すぐ出れますよ」
ゆっくりしている暇もなく、
準備万端で待ち構えていた山下さんと二人、
事務所を後にする。
「行ってらっしゃい」
「頑張ってねー」
二人の背に、
残ったチームメンバーが声をかける。
私も、小さな声で
「頑張ってください」
とは言ったが、
彼らに届いたかどうかは
分からない。
山下さんは、一度も
こちらを振り返らなかった。
真剣な表情をして、
前だけを向いていた。
最初のコメントを投稿しよう!