第二話 【誰のための嘘】

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「悪い。遅くなった」 二時を回った頃、 打ち合わせに出ていた室長が戻ってきた。 「山下、用意できてるか?」 「もちろん。すぐ出れますよ」 ゆっくりしている暇もなく、 準備万端で待ち構えていた山下さんと二人、 事務所を後にする。 「行ってらっしゃい」 「頑張ってねー」 二人の背に、 残ったチームメンバーが声をかける。 私も、小さな声で 「頑張ってください」 とは言ったが、 彼らに届いたかどうかは 分からない。 山下さんは、一度も こちらを振り返らなかった。 真剣な表情をして、 前だけを向いていた。
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