25…ごめんなさい、本当はずっと大好きでした。

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荷物を纏めて引っ越してきて、半年が過ぎた。 もちろん私の部屋は、昴の部屋で。 彼の面影を残しながら、彼のベッドで眠り、彼のベッドから朝を迎える。 隣りには、静かに添い寝をしてくれる昴。 「…おはよう…」 「…おはよ…」 今年の8月には流星群がまた夜空を走る。 そんなニュースが流れていて。 早いね、昴。 もう12年が経つんだね。 「…俺が死んで12年か…」 私は、昴のお父さんが作ってくれた朝食を食べて、しみじみニュースで流星群の説明を聞いていた。 出勤時刻に慌ただしく出掛けて行ったものだから、せっかくお父さんが毎朝作ってくれる、手作り弁当を忘れてしまった。 しょうがない、コンビニ弁当にでもするかぁ。 うちの本屋の隣りには、どうやら大きなオフィスビルが立つようで、この辺りの地元もだいぶ栄えて、昔の面影を無くしつつあった。 変わらないものが、あるならば。 私の昴に対しての愛だ。 そして、昴の私への愛だ。 「ちょっとお弁当買いに行ってきますね?」 休憩になって、一緒に食事をするおばさんに一声掛ける。 「あれ?珍しい」 「忘れちゃったんですよ」 帰ったらちゃんと、お父さんの作ってくれたお弁当を食べなきゃ。
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