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「気を付けてね、隣りのビル、足場外してるみたいだから」
「はい。すぐ戻りますから、先に食べて待ってて下さい」
おばさんたちに頭を下げて、休憩室から出て、財布を片手にビルの前を歩いていた。
私の目の前を歩いている親子。
お母さんの手を引っ張ったりして、小さい男の子が落ち着かない感じで歩いていた。
お母さんは片手でベビーカーをひいて、大変そう。
「…何?気になるの?…」
幽霊の昴が私に問い掛けた。
全然。いや、大変だなぁ~って思っただけ。
「…もしかして、ちょっと子どもが欲しいなぁとか思ってない?…」
何言ってんの?恥ずかしいなぁ。
だいたい、そんな無理な事。
いくらなんでも願わないよ…。
「…本心?…それ?…」
私が頷こうとした瞬間、男の子が手を離れて歩道の方へと突然駆け出すから、目の前のお母さんは慌ててベビーカーから少しだけ離れた。
「こら!どこ行くの!ちょっと!待ちなさい!」
戸惑いながら、ベビーカーを見つめている。
誰か付いてないと!
私はベビーカーに、とっさに駆け寄って、そのお母さんに告げる。
「私、とりあえず付いてますから(笑)」
「すいません、本当に…」
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