114人が本棚に入れています
本棚に追加
私も頭を下げて、ベビーカーの中の赤ちゃんを見ると、驚いた。
以前、昴のお母さんに写真を見せてもらったんだけど。
昴の赤ちゃんの頃にソックリだったから。
色白の艶やかな肌に。
綺麗な瞳。
真っ直ぐな睫毛。
「こんにちはぁ…」
話掛けて、微笑み返された時だった。
昴の叫び声が聞こえた…。
「…あぶない!トシコ!避けろって!!…」
ガランガラン!…ガラガラ…!!
「ウワァーーッ!!」
「キャーーッ!!」
鉄筋が落ちてくる音。
私は慌てて、ベビーカーを身体で覆った。
「イヤーーッ!!誰か!!うちの子がぁ!!」
鉄筋が物凄い音を立てて、私の目の前に叩き落ちる。
私の視界には、昴によく似た赤ちゃんしか写らなくて…。
やがて、昴の顔と重なって…。
私は、その真っ直ぐな瞳に呟いた。
「昴…ごめんね…」
子どもの頃に私が言ってしまった、死を暗示するような、最低な言葉を撤回したくて。
おまえなんか死んじゃえバーカ…
本当はあの時、あんな言葉が言いた訳じゃなかったの!
ごめんなさい…昴っ!
そう言いたかった…!
ガラガラ…ガラガラ…!!
鉄筋が背中に勢いよく落ち続けるが、私は身体を絶対に傾けない。
痛いけど…
最初のコメントを投稿しよう!