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蝉の声…
葉の揺れる音…
私は眩しくなって目を覚ました。
まだ、瞼を上げられる事に妙な気持ちになった…
天井…
時計の秒針の音…
どこかで見た空間だった。
私の胸には、長くて太い腕がフワリと乗っかっていて…
赤ちゃんの匂いがして、薄めで横を見る。
色白の艶やかな肌をした、真っ直ぐな睫毛をした、どこかで見掛けた赤ちゃん…
その子の胸にも、私を包む腕が優しく乗っかっていた。
………。
そして、その腕を辿って…
向こう側に居たのは、赤ちゃんと同じ顔をして眠る昴。
私はその穏やかな二人の表情を、頭を傾げながら見つめていると、昴の瞼がゆっくり上がって、すぐに私を捕らえた。
「…いつの間にか三人で、昼寝しちゃったんだな」
「えっ?…あぁ…うん…そうなのかなぁ…」
当たり前のように言うから、私は相変わらず戸惑った返事をする。
「これ夢なのかなぁ…それとも夢を見てたのかなぁ…」
「何言ってんの?トシコ…」
昴は少しだけ起き上がり、赤ちゃんを見つめる。
「結婚して、子どもが出来て、これがトシコが願っていた毎日だろ?…いつも願うのはおまえで、叶えてやるのは俺の役目…。そうやって今までだって、やって来てたじゃん」
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