1…見知らぬ男の子

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弟は優しいし、気が弱いからか、すぐに謝れば、どんな事でも誰でも許してくれるもんだと思い込んでいて、情けないくらい要領がいい。 サッカーボールを取りに行って、男の子に手渡すの。 「お兄ちゃん、顔、大丈夫?痛くない?」 私は何も言えないで、弟の隣りで黙りこくる。 「僕のお姉ちゃんが投げた靴で、本当にごめんなさい」 弟が私の代わりに、バカみたいにペコペコと頭を下げる。 私は相変わらず、何も言わない。 遊んで居て、楽しかった雰囲気が壊れた事のが、私の中で重要だったのもあったから。 「ケガしてない?血、出てない?」 露骨にわざとらしく、弟は心配する。 女の子より男の子の方が、頑丈に出来てる生き物なのに、なんで弱い女の子の私が、わざわざ男の子なんかの心配なんてしなきゃならないの? なんて、思っていたら。 「…おまえの姉ちゃん、言葉喋れねぇのかよ?」 あぁっ?!(怒) 「おまえの姉ちゃん、バカだろ。ごめんなさいも言えねぇなんてなぁ。覚えてろよ、俺の親はメチャクチャ怖いんだからなぁ、言い付けてやる!」 カチーン!!… 「私、簡単に謝ったりしないもの!」 私は喧嘩越しで言い返す。
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