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「ア、ア、アリス!!奴をつまみ出せ!!」
直樹が急に慌てふためく。
「無理でございます、ご主人!わ、私だって恐ろしくて…!」
アリスさんまで、なに?
あたしはロザリオをしまうと、席から立ち上がり、部屋のすみに固まった3人の男性を見つめた。
「何ですか?食事中に騒がしい…、」
「何ですか、じゃねぇ!お前、あれか。ク、クリスチャンか?…金輪際、お祈りは禁止だ!うちに住みたいなら、その掟を守れ!」
何なのよ、一体?
「この館は、皆、仏教徒ですから…十字架はお止め下さい。」
寡黙な森下さんが、補足する。…無理あるだろ、この館に仏教的な要素、ないだろ。
「と、いうわけです。お嬢さん。主人の言いつけには従っていただきたい。」
アリスさんまで。
冷や汗かいちゃって、どうしたんだろ?
「分かりました。…では、いただきます。」
仕方なく、あたしは仏教的に合掌して、フォークを手にした。
「ん!おいしいわ!」
「喜んでいただけて何よりでございます。」
アリスさんの機嫌が直った。
「でも、時々お肉のようなものが見え隠れしてますが?」
「気のせいでございます。」
いや、これはどうみたって動物性食品だわ!
「佐倉さん、器用ですね。意外と。」
細切れの肉だけを綺麗に残したあたしは、ナプキンで口をぬぐった。
「ごちそうさまでした!あ、お片付けくらい、手伝いますよ!」
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