第1夜

5/19
前へ
/393ページ
次へ
現れたのは…、 素人のあたしが見ても高価と分かるブランド物のスーツを着こなした、この店には明らかに場違いな金髪イケメン紳士。 「連絡お待ちしておりました。…で、部屋を探していらっしゃると言うのは、こちらの女性ですか?」 「そ、そうです!!条件にぴったりでしょう!?」 なぜか一人興奮する不動産屋。 「主人に聞いてみないと分かりませんが、おそらく彼女で大丈夫でしょう。」 「は、はい!!ありがとうございます!!」 不動産屋は深々と頭を下げた。…理解不能なんですけど。 「では、お嬢さん。ついて来なさい。…荷物はそれだけですか?」 え?…ええっ!? 「あ、あの…あたし、まだ何とも…いや、それ以前に家賃とか色々っ…!」 「ご心配には及びません。お嬢さんがお気に召さない時は、いつでも契約を破棄していただいて結構ですから。」 は、はあ。…いや、そうじゃなくて!! あたしは目線を送り、不動産屋に助けと説明を求めた。 しかし、不動産屋は男から紙切れを1枚受けとると、もうあたしの事なんて忘れてしまったかのようだった。 仕方なく、あたしは男の後について行った。 荷物を持っていかれてしまったから。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加