第1夜

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男性ばかりのアパートなんて、何だか落ち着かないな。 2階がその人たちの部屋なのだろう。 「さっきは言いそびれてしまいましたが、あの…あたし、こんな立派なアパートに住めるほど、お金、持ってないんです。」 高そうなアンティークの椅子に身体を縮こめるように座りながら、あたしは言った。 お金がないことは悪いことじゃないけれど、口にするのは恥ずかしかった。 「お金は、いりませんよ。大丈夫と言ったでしょう?」 そんなあたしを面白そうに眺めながら、男は意味不明なことをサラリと言った。 「お金がかからない?…そんなの、おかしいです。」 おかしいし、怪しい。 まさかと思うが、実はあたしに住み込み家政婦でもさせる気かしら? 悪いけど、掃除も料理もレベル低いぞ、あたしは。 いや、待て。 ま、まさか…! この人、さっきご主人様がどうとか言ってたよね? あ、あたしにご主人様の夜のお相手をさせるつもりじゃあ…! に、逃げなきゃ! 荷物はいらない! 逃げなきゃ!
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