第1章 編入試験

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  「ほー、立派な建物だねハーミー」 ハーミーはDOGなので建物が立派かどうかはどうでもよかったが、アルの機嫌がちょっとよくなってきたことを感じたので、尻尾を振って「ハッハッハッ」と上機嫌に吐息を漏らして見せた。 「そうかそうか、ハーミーも気に入ったのか。ここが今日から僕らの暮らす場所になるんだよ。もうお金の心配はしなくていいんだ。勉強するのは死ぬほど嫌だけど、ご飯が食べ放題なら僕は頑張ってここで生きるよ」 あ、やっぱりご飯のために来たのか。とハーミーは思ったが、DOGなので口には出さなかった。 「なんだか帝都内にあるにしては場違い感がハンパないよね。敷地がやたら広いし、なんか時計塔みたいなのあるし、校舎はロンドンのバッキンガム宮殿みたいだし」 DOG先進国イギリスのロンドンをイメージし、校舎や庭園や時計塔がつくられているのだが、アルはまだ知らない。 「それにしても綺麗な庭園だなぁ。お、あっちに桜並木があるよ。せっかくだし、編入手続きの前に散歩でもしようか。いくよ、ハーミー」 ハーミーを引き連れ並木道を歩くと、アルはベンチに腰掛け桜を見上げる少女の姿に気がついた。 薄幸の美少女。アルにそう思わせるような、どこか切なげな空気を纏う、日本人らしい黒髪の女の子だった。
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