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徳山一家が越してきて、一ヶ月後。俊哉は、学校が終わると急いで家へ帰った。いつもなら母:弥生のしつけにより、靴をしっかり揃え、手洗い、うがいをする。しかし、この日はそれどころじゃなかった。
「ママッ! ママッ!」
家の中をバタバタ走り回り、弥生を探す俊哉。
「ママッー!」
どうやら、弥生は洗濯物を干していたようで、洗濯かごを持って、奥から歩いてきた。
「俊ちゃん、どうしたの?」
そして、玄関を見る。
「もう、靴はちゃんと揃えなさいっていったでしょ。そうそう。ちゃんと手は洗った? うがいはした?」
「それどころじゃないんだよ、ママッ!」
「とりあえず、手を洗って、うがいしてから話しなさい。いいわね?」
俊哉は、とりあえず手を洗い、うがいをしてこないと怒られるパターンだと思い、洗面所へと向かう。
「手抜きしないで、ちゃんと手洗い、うがいしなさいよ。」
「はーい。」
俊哉は、いわれたとおりに手をしっかり洗い、うがいも手を抜かずしっかりとする。そして、気を取り直し、弥生のところへ向かう。
「ちゃんと手洗った? うがいもした?」
「したよ。」
「俊ちゃん、話あったみたいだけどなあに? 学校で何かあったの?」
「ママッ、太一たち見た?」
「おとなりの徳山さんたちね。いるわよ。だって、昨日、太一くんのお母さんとお話ししたわよ。」
「太一のお母さん普通だった? 何か言ってなかった?」
「特に何もいっていないわよ。一体、どうしちゃったの? 俊ちゃん、何かあったならはっきり言いなさい。」
「太一、転校したって。」
「えっ? 昨日までいたし、引っ越してきたばかりなのに? 間違いじゃないの?」
「間違いじゃないよ! 先生が言ってたもん!」
弥生はまさかと思い、徳山さんが住んでいる家を外に出て見た。もちろん、俊哉も一緒に。たしかに、俊哉のいったとおりのようだった。
昨日までは普通だった徳山さんの家が表札もとられ、カーテンもなくなり、中はガランとしていて、人の住んでいる気配は感じられなかった。
それを見た弥生は、何が何だかわからず、呆然とするしかなかった。
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