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「ただいまー。」
敏史が帰ってくると、バタバタと俊哉が走ってくる。
「ねー、パパ、パパ。」
「俊ちゃん、まずはパパにおかえりなさいでしょ?」
「あっ。忘れてた。パパー、おかえなさい。」
「おうっ。ただいま。」
「ご飯できてるから、食べてから風呂には入ってね。俊ちゃんも、一緒にご飯食べなさいよ。」
俊哉は「はーい」といい、リビングへと移動する。敏史も同じく、リビングへと移動する。どうやら、三人分、ご飯は用意されているようだ。三人、椅子に座る。
「いただきまーす。」
三人はご飯を食べ始める。そして、俊哉が、話しかける。
「ねー、パパ、知ってる?」
「何を?」
「お隣さん、またいなくなっちゃったよ。」
「えっ? そうなんだ。」
敏史は朝、隣の家を見て、それは知っていたが、俊哉に合わせるためにあえて知らないふりをした。
「そうなのよ。またお隣さん、急にいなくなっちゃったのよ。貸マークもついているのよ。」
やはり、弥生も不思議そうにしている。いや、どこか不安そうな顔をしている。それもそうだろう。隣の家も敏史とほぼ同時期に完成した家なのに、こうも人の入れ替わりが激しくては、不安にもなる。
そして、霊的なものを信じなくても「何かあるのではないか?」と思ってしまうのが、人間の心理だ。
「もしかして、隣の家、出るのかな?」
「俊ちゃん、出るって何が?」
「あれだよ、あれ。」
「俊哉、あれって?」
「幽霊だよ。幽霊。」
「馬鹿ねー。幽霊なんているわけないじゃないの。俊ちゃん、テレビ見すぎよ。」
「じゃあ、何であんなにきれいなおうちなのにみんな、すぐ出ていくの? すぐ出ていくなら借りなければいいじゃん。」
俊哉の言うことはもっともだ。新築物件に越してきたのだから、一ヶ月足らずで出るのは早すぎるし、おかしすぎる。しかも徳山さんたちだけじゃなく、50代の夫婦まで、すぐに出ていくなんて、はっきりいってありえない。
「こら。そんなこと言わないの。パパは幽霊とかの話は、とっても苦手なんだから、怖がらせちゃダメよ。」
弥生のいうとおり、敏史は幽霊話とかの類いが苦手だ。昔から、そういった話は苦手で、幽霊話とかいったら耳を塞ぎたくなる。そして、そんな敏史を見て、俊哉は、「パパの弱点みーつけた。」といわんばかりに、ニヤニヤしていた。
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