第1章

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第1章

要田俊哉はアパートの一室ではしゃいでいた。 「パパー、新しいお家、いつできるのー?」 「俊哉がおこうさんにしていたら、明日にでもできるんじゃないかな。」 「ヤッターヤッター!! うりゃうりゃ!!」 はしゃいで障子にパンチを繰りだし、穴を開ける俊哉。 「コラッ!!俊ちゃんダメでしょ!! こっちにきなさいっ!!!」 「イタタ、ご、ごめん、ママッ!!」 謝っても、許さず、耳を引っ張り奥へと連れていく母、弥生。そして、奥からは俊哉の泣き声が聞こえてくる。それを聞き、父、敏史は笑っている。どうやら、この家庭では日常茶飯事の光景のようだ。 俊哉の父、敏史はいま、念願のマイホームを建築中である。そして、その完成時期はあと一ヶ月を切っており、引っ越し準備をこまめにしている最中だ。 ちなみに、普通なら障子に穴を開けるのはいけないが、「障子なら新しい方が入居したときに取り替えますよ。」と大家がいったのを聞き、俊哉は障子に穴を開けているというわけだ。 敏史は、このようなことは気にしないが、妻の弥生はそうではない。しつけに厳しい。まあ、おっとりタイプの敏史と真逆の弥生だからこそ、成り立つ夫婦で家庭内の環境はとてもいい。 「おーい、弥生、それくらいにして引っ越し準備手伝ってくれよー。俺が仕事休みのときに少しでも済ませよう。」 そういうと、弥生と泣いている俊哉が奥から出てくる。 「俊哉、ママに怒られたことをしっかり反省しているなら、ママにその気持ちをみせるために引っ越し準備手伝うんだぞ? 分かったかい?」 俊哉は「うん」といい、自分の荷物を必死にダンボールに詰めている。弥生も念願のマイホームへ引っ越しが楽しみらしく、表情をみて、ウキウキしているのが分かる。 (さあ! 引っ越し準備頑張るぞ!) そう思いながら、敏史も自分の荷物をどんどんダンボールの中へと詰めていった。
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