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現実逃避したい誘惑にかられながら、ルシファーを自分の背後に隠すように体を移動させる。ミカエルの視界から逃がすという意味もあるが、砕かれた結界の障壁から守るという意味合いが強い。
現に、自分が識りうる中で最も堅牢な結界に無数のヒビが入っており、ピシピシと音を立てながら崩壊の一途をたどっていた。なお、攻撃はーー殺人的な視線と殺気を多分に含んだ重圧にさらされている時点でもはや、常人にとっては致命的な攻撃ではあるがーーされていない。つまり、覇気だけで最上級魔法に属する結界を破っているということだ。
いやな汗が流れる。
「うん?仕事が忙しくてストレス溜まったから癒してもらおうと思ってね」
「……それは、お疲れ様です」
缶詰めは逆効果ですラファエル様!!!と内心絶叫し、今度神級と古代、禁術レベルのもの教えてもらおうと思った自分は悪くない。
「癒しになるかわからないが、食事でもして行かないか?」
「甘やかしちゃダメですよ!!!!!!」
思わずルシファーの提案に、あなたは何を言ってるんですかと全力でツッコミを入れた。気分はさながら自殺行為をするひとを己が全力で阻止しようとしている感じだ。手遅れであることは否めないが。
「ほんと?じゃあまず邪魔者を抹消しなきゃだね」
蒼穹と称される眼は感情が見えないせいで酷く暗い。それがひたりと自分を見据えた瞬間、わき上がったのは身の毛もよだつような本能的な恐怖であった。
ゆっくりと立ち上がり、こちらに一歩踏み出す相手に臨戦態勢を整える。どこまで応戦できるかわからないが、むざむざ死ぬつもりはない。
元がつくとは言え、これでも勇者の端くれ。それなりに矜持があるのだ。
ハードワークで色々とーー特に倫理的にイっちゃている大天使に負けるわけにはいかない。
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