日常化しつつある非日常

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うっすらと白く明るくなる視界とグイッと引き上げられる浮遊感に、起床時刻であることを知る。 瞼をあげれば、まだ夜の闇が残る自室の天井がはいる。見慣れた、と思えないのは今まで目をさました時に天井を見る機会がなかったからだろう。 その原因に思いいたると、まだ微睡んでいた意識が急速に覚醒し、飛び起きた。 ――のんびりしている場合じゃない! 簡単に身だしなみを整えるとクローゼットから執事服一式を取り出し素早く着替える。耐久性と動きやすさを重視したそれは、しかし複雑なデザイン故に着るのに手間取る。 その動作に荒っぽさや粗野な印象を受けないのは、教育係の指導の賜物の言えるだろう。 姿見鏡で服に余計なしわやよれがついていないか確認した後カーテンを開け、跳ね上げたシーツを伸ばしベッドメイキングをして部屋を出た。 このあたりは、ここで暮らすようになって上司から言われたことだ。 曰く、使用人の身だしなみや生活態度は主人の品格を他者にあらわす一つである、と。 昔と違い、今はひとに仕えているのだから、きちんとしたい。自分が仕えたいと思って仕えているのだから。
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