日常化しつつある非日常

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灯りの落とされた廊下は部屋とは違い、少し冷えていた。それが、身体と精神を引き締めるようで好ましく思う。城全体の廊下や部屋は自然光が入るように造られているため、基本的に朝から灯りを点ける必要がない。 よって、執事の朝一番の仕事は主人に起床時刻であることとモーニングティーを入れることである。 胸のポケットから懐中時計を出して時間を見れば、主人の起床時刻の30分前であった。 ――…!これなら ここ1ヶ月の間に毎朝の恒例になりこのままいくと(すでにあるひとにとってはもう日課になっているが)習慣になるだろうことを防げる可能性に微笑む。 アレを喜んでいるのは実質、城内ではメイド長とその直属部下くらいなのだ。 厄介なことに、彼女たちの行動は時に収益をもたらすため完全にその行為を止めさせることができないのだが。 以前、その事について意見したことがあったが、メイド長が浮かべた慈愛に満ちた笑みと 『大丈夫よ、詳細は妄想で補うから!深くまでは観ないから安心して。そういえば、この前の“消毒”は眼福だったわね。グッジョブ!そして、ごちそうさま』 の言葉の前に消え失せた。 まさか観られているとは思わなかった。というか、まさか自分たちも観察対象になっているとは予想していなかった。 プライバシーとは何かを切に考えるようになったのは仕方ないことだと思う。
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