第1章

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 土曜日。  月並みなサラリーマンである私は、休日ですら返上して、会社に向かう電車の中に居た。  平日の朝ではないとは言え、三連休初日の車内は、いつも通りの人の山で。  いつも通りに両手で吊革を掴む姿は、何とも情けない自衛手段だった。  いつも通りであれば数十分、必死に吊革を守っていれば会社の近くの駅まで運んで行ってくれる電車は、その日に限って、いや、そんな日だったからこそか、唐突に止まって。  ……トラブルの為、この電車は、急停車いたしました。  数分の後にアナウンスが聞こえた。  ナニカを轢いたのだろう。  溜息を吐きながら腕時計を見る。  九時。  ……遅刻、か。  ざわつく車内で、胸ポケットに入れていたスマートフォンを取り出せば、履歴を埋めている番号を呼び出して。 「…………。えぇ、……はい。……申し訳ありません。」  幾つかの弁明と謝罪の言葉を並べれば、向こう側から通話が切れる。  私はもう一度、肺の中の空気を吐き出せば、頭上にぶら下がる輪を守りながら、電車が動くのを待つ。
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