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いつの間にか。
あれほど澄んでいた青空が紅く変わっていた。
どれ程独りで歩いていたのだろうか。
部屋に籠っているのが嫌で出て来た筈なのに、一向に晴れないままの靄が心臓の辺りで渦を巻いていて。
「おねーさん、今暇?」安い言葉に、気が付けば、ピンク色のネオンが眼に飛び込む。
このまま、この人に着いて行ってしまえば、何か変わるのだろうか。
ふ、と、そんな事を思ってしまう。
友達と一緒なら、笑ってあしらえたのだろうけれど、今の私は表情を失くしたまま、無視を決め込んだ。
後ろから、罵声に似た声が飛んできた気もしたけれど、何も感じなくて。
賑やかな其処が嫌になって、また一つ、角を曲がると。
父親を、見つけた。
……見つけてしまった、と言うのが正しいのだろう。
大きな縫い包みを嬉しそうに抱えた女性と歩く、その横顔は、笑み。
「……あぁ、そう言う事、か。」
納得してしまえた。
その後の事は、よく、覚えていない。
気が付けば、家の前でドアノブを回していた。
母は、買い物に出かけているようで、鍵が掛かっていた。
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