Lesson 1

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   泥沼にはまっていくような、体中の皮膚を土の匂いに重ねるような、鈍い痺れが襲ってくる  思い出すだけで体が反応するなんて……  私はこめかみを指で押さえて気を取り直す  ◇◇◇  『スミノフ』はロシア料理店だった。間口は狭いが、中は結構広い。外側の印象と違い内側は天然木で覆われていて、ワイルドな雰囲気  「早由理さん」  先に席についていた天斗が、手を挙げて私を呼ぶ。私は早足でテーブルまで行くと向かい側に座った  「旦那様の夕食は作らなくていいの?」  「いつも夜中に帰ってくるから、作るだけ無駄なの」  「そっか。じゃあ食べていく?」  「ええ、もちろん」 .
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