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泥沼にはまっていくような、体中の皮膚を土の匂いに重ねるような、鈍い痺れが襲ってくる
思い出すだけで体が反応するなんて……
私はこめかみを指で押さえて気を取り直す
◇◇◇
『スミノフ』はロシア料理店だった。間口は狭いが、中は結構広い。外側の印象と違い内側は天然木で覆われていて、ワイルドな雰囲気
「早由理さん」
先に席についていた天斗が、手を挙げて私を呼ぶ。私は早足でテーブルまで行くと向かい側に座った
「旦那様の夕食は作らなくていいの?」
「いつも夜中に帰ってくるから、作るだけ無駄なの」
「そっか。じゃあ食べていく?」
「ええ、もちろん」
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