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◇◇◇
目覚めたのは日がとうに昇ったころ、私はベッドの上に横たわったまま、昨日の余韻に浸っていた
出窓に飾ってあるポトスの葉が、淋し気に光って見える
火をつけたまま帰っちゃうなんて、意地悪な人
「おーい。俺の歯ブラシどこにいったかなぁ」
寝室の扉を開けて夫の裕幸が言った。私は、ベッドから半身を起こすと頬をパチンと叩く。なかなか目が覚めない
「なあ、歯ブラシ……」
ベッドの脇まで歩み寄った裕幸が、惚けた顔で訊いた
「窓際のコップに入れてあるでしょ?」
そう答えると、裕幸は「ふーん」と言って部屋を出て行く
裕幸と結婚して、いつの間にか三年が経った。小柄で出っ腹の男。鼻は三文銭のように丸く、見事にあぐらをかいている。大学のサークルからの腐れ縁だ
あのころは、裕幸の優しさに包まれて自分が幸せだと信じていたのに。窓の外でアジサイの花がきれいに咲いている。雨上がりの空は透明なホリゾントブルー
その奥に宇宙が隠れているなんて、不思議
ふとそう思って自分の体を見る。私……素裸で眠っていたんだ。コットンのシーツが肌に心地よい
でもこのまじゃ、そう思って布団ごとくるまったまま片手で箪笥の引き出しを開ける
「おーい。ないぞ」
旦那が来る前にとりあえず下着だけは着けておかないと
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