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相談員の方が説明にこられた。
「今日は心理テスト、そのあとにドクターの診断があります」
智理は相変わらずじっとしておれず、もじもじしている。「大体なんで俺はこんなとこにつれてこられたのか?」という感じである。僕もどうも落ち着かない。昼間のなのに、建物の中が暗く感じる。
「智理くん、そっちで遊んでて」
智理はそれを聞くとぱっと走って遊具の方に向かった。
しばらくして、準備ができたらしい。
「智理くん、こっちの部屋にきて」
智理は相談員方と、奥の部屋に入った。30分、一時間?ずいぶん長く感じた。その間にセンターの職員の方が、ドクター、大林先生を紹介してくれた。肩書きは「ライフステーション鴻巣 子供の発達支援センター所長」となっている。
智理が部屋から出てくると大林先生は、図形や絵など智理が書いたものをじっくり見ていた。智理は、相変わらず、気忙しく遊びはじめた。大林先生は時おり、智理を見ながら声をかけた。
「智理くん。君は、何が得意かな」
智理は一瞬引いた。相変わらず大人は苦手である。
「野球」
ぼそっと智理は答えた
「そうか。でも、ここでは野球できへんから、そうや、おっちゃんと卓球で勝負せえへんか」
智理は一瞬ポカンとしたが
「ええで。でも、俺、卓球もうまいで」
先生と智理が卓球をはじめた。僕はこれがなんの診断なのか、さっぱりわからなかった。だが、ゲームが進行しはじめると、さっきのおどおどした、智理出はなく、真剣である。大林先生は何度も負かされて、その旅に
「やられた!」
「ほんま上手やな!」
と大袈裟と思えるくらい声をかけた。
「参った!」
先生がいった
「智理くんの勝ちや、ほんま強いな」
そういうと、智理は得意満面である。 「よし、今度はこのおばさんと勝負や」と相談員の方にラケットを渡した。 「お父ちゃん、お母さん、さっき智理くんのいた部屋にお願いします」
「はい」
僕と嫁は、何がなんだかわからず、先生についていった。振り返ると智理は相変わらず卓球に熱中していた。
部屋に入ると先生は智理の書いた図形や絵なども見ながら、説明してくれた。 「いや、しつれいしました。子供はいいですね。まあ、ここは病院でもなんでもありませんから、落ち着いて話しをしましょう」
病院の待合室のような気分だったが、ここは子供センターだった
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