2回 悪ガキの理由

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「なにか、わかりましたか?」  僕はさっきから答えを聞きたくて、うずうずしていたから、結論を急いだ。先生は、しかし落ち着いて、ゆっくりと、答えた。  「そうですね。お父さん、お母さんは、アスペルガー症候群という言葉を聞いたことがありますか?」  「いえ、聞いたことがありません。病気なんですか?」  「そうですか。では、説明しますね。アスペルガー症候群、最近ではこの呼称ではなく自閉症スペクトラムとも呼びます」  「自閉症?自閉症って、あの自閉症ですか?」  「そうですね、あの自閉症かと言われると違いますね。アスペルガー症候群はむしろ、自開症とか言われるくらい、反応としては活発に動きます。また、知的障害は見られません。ただ、発達障害、ようは簡単にいうと、年齢相応なコミュニケーション能力がついていってないというか、発達が遅れています。だから、本当に純粋です。大人のいった言葉は額面どおり受けとめます。例えば、お前はアホだなと言われるとします。普通、言っている方も、本気でアホだなんて、思ってませんし、むしろ、口がついて出てしまった失言です。しかし、受けとめる子供の方も、一種の比喩、アホなことしてるなあと、言われていると感じ、受け流します。しかし、アスペルガー症候群の子はそうではありません。僕はアホなんや。と、まともに受け取ってしまいます。原動が幼いから、口では解決出来ず、手がでます。また、話しが一方的で、相手が興味を持っているいないに関わらず、延々と話しをしたりします」  言われて見ると、当てはまるところが、あるような気がした。先生はさらに続けた。  「アスペルガー症候群があることを理解していないと、なぜ、この子は、みんなが出来ることが普通に出来ないのか、なぜ、反抗するのか、と、まわりの大人は、きつくあたってしまいます。しかし、子供にとっては、なんでこんなに怒られるのか、なぜ、こんなに酷いことを言われるのかと、常に傷つくようになり、しまいには、人格を否定してしまうことに、つながってしまいます」  ここまで、聞いて、はっとなった。たしかに智理は怒られてばかりである。家でも、学校でも、そして野球でも。よかれと思ってやっていた事が、逆に智理を傷つけていたのである。唖然とした。どれだけ智理は傷ついたことだろうか。しかし、どう、育てていけばよいのだろううか
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