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しかしし本質的な問題の解決にはなんの答えも見いだせないでいた。
柱屋監督はよく怒鳴るタイプの指導者である。智理もよく怒られていた。しかし、やはり逆効果である。
ほとほと悩んだあげく、僕は実家の母に相談した。僕は4人兄弟の長男。弟が3人いる。四人の男を無事に成人させた母の見解は
「あんたも小学生の時は問題児だったわ」
という。
そう言われれば、僕もよく怒られた。今なら児童虐待で通報されそうな、厳しい叱り方もされた。でも、ほとんど効果がなかったというのである。あの時、僕はどう感じていたのだろう。なにを思っていただろう。そういえば、記憶にあるのは叱られたという記憶だけで、なにをしでかしたのか、よく覚えていないのだ。ただ言われてみると智理の行動は、何となく自分の少年時代を写しているような気がする。母は言う。
「あれは、二年生か三年生のころだったかなあ。この子は末はやくざか強盗になる。言われてねえ。たかだか小学生の子供の事をそこまで言われてくやしかったわ」
僕は思わず母にたずねた。
「どうしよう思ったん?」
母は答えた。
「そうやねえ、まあ、どんな子であっても結局、最後まで守ってやれるのは親なんだから。そうおもってねえ」
頑固で気の強い母は精一杯、我が子である僕を守ってくれていたのだ。
そうだ。今、智理を守ってやれるのは、僕と嫁だけなのだ。帰宅したのは深夜だった。子供部屋に入ると、智理は嫁の隣でぐっすり寝ていた。リビングでビールを開けた。出来る事はなんでもやってやろう。なぜか涙がでた。
入佐山高校は立ち上がりから、いきなりノーアウト満塁のピンチを迎えていた。四球とエラーのランナー、最悪の出だしである。富士本先生は早くも一回目の伝令を送った。マウンドに内野陣が集まって、網川にカツを入れる。
しかし、直後、高めにきたストレートは高々とセンターに返され、タッチアップで一点、さらに左中間をやぶる長打で二点。一番悪い点の取られ方である。智理は再びマウンドに走った。
「ボールが高い。狙われてるぞ」
入佐山高校には四人のピッチャーがいる。その中で唯一、速球派なのが網川である。しかし、今日の網川のストレートはキレがないうえに高めに浮いている。
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