プロローグ

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 直也がスカイツリーの横を通り過ぎようとした時、風切音のような聞き慣れない音が聞こえてきた。その音の原因を探るために辺りを見渡す。周りにいる人もその聞き慣れない音の原因を探るように、あちらこちらを見渡していた。    その中の1人が空を見上げ叫んだ。 「なんだあれは!?」  その声に釣られて直也も、その他の人達も一斉に空を見上げる。  そこには炎と煙を上げながら、もの凄いスピードで墜落してくる旅客機の姿があった。その旅客機はその制御が出来ないままに、スカイツリーの中腹部に突っ込んだ。    激しい衝撃音と熱波。そしてその衝撃波により直也もその他の人も全員が吹き飛ばされる。直也はあまりの突然の出来事に何が起こったのか分からず、さらに吹き飛ばされた衝撃で肩を強く打ったようで痛みが激しい。  しかしその痛みのおかげなのか打ちどころが良かったのか意識は失うことはなかった。しかしそのことに安堵している余裕などなかった。  旅客機が突っ込んだスカイツリーからは煙が絶え間なく上がっている。さらに直也の耳には何かが軋む音が聞こえてきた。そして何かが弾けるような音も同時に聞こえる。  人間は何か衝撃的な出来事に襲われると返って冷静になるものである。それは脳内物質の作用だとか言われてはいるが、ハッキリとした原因は未だに分かってはいない。ただこの場合、謎の音の発生源がどこからのものなのかを瞬時に判断するのに一役買ったのは事実である。 「まさか……」  直也はスカイツリーを見上げる。音の発生源は間違いなくスカイツリーであった。  スカイツリーの中腹部から上が少し傾き始める。直也はそれに気が付きその場から急いで逃げようとする。しかしその傾きは徐々に大きくなり、そして新たな爆発音を上げると一気に崩れ始める。    逃げ惑う人と悲鳴が響き渡り、辺りは一瞬にして地獄絵図の様を築き上げた。巨大な人工物が崩れた衝撃で、爆風が起きそれにより新たな怪我をした者も、崩れたスカイツリーの下敷きとなってしまった者もいた。  直也は、この重大な危機を間一髪の所で逃れてはいたものの飛んできた破片により足を負傷していた。なんとか歩くことは出来るが走ったりするのは当分の間は不可能に思われた。
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