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周りに多数の犠牲者がいることと、自分自身が怪我をしていることを踏まえ直也は自力で救急車を呼ぶことにした。携帯電話を取り出すとすぐに119番を押す。
しかしコール音すら鳴ること無く携帯電話の通話は切れてしまった。よく見ると普段は表示されている天気情報なども非表示状態となっている。アンテナ表示も圏外を示している。
「……電波がない?」
直也は携帯電話をポケットにしまうと、すぐに歩き出した。本当は走りたい衝動に駆られているが、今の足の状態ではとても走ることは叶わない。
直也の頭の中に浮かんだのは2つのこと。1つは家族のこと。もう1つは幼馴染のこと。直也の頭の中はフル回転をし瞬時に判断した。まずはここから近い大学に行く。そこで家が隣である幼馴染を見つけて、それから2人で家に向かう。直也がしたのはそういう判断であった。
なぜ直也がその判断をしたのか。それは遠くから聞こえる連続した爆発音。それは状況が明らかに、ただの墜落事故に留まらないことを意味していた。旅客機が墜落し、スカイツリーへと突っ込んだ正確な理由は今の直也には分からない。しかし、ただ事ではないこの状況から推測を立てることは出来た。
考えうるのは2つの状況。どこかの国から戦争を仕掛けられたか、もしくはテロ行為があったかの2つである。どちらにしろ、日常の状況ではないことは明らかであり、直也が幼馴染を見つけて、家族の元に戻ろうとする思考は半ば必然である。
「くそ、早く大学にいかないと……」
足を引きずりながらも何とか大学へと辿り着いた直也。大学は何があったのか半壊していた。その光景を見て多大なショックを受ける直也であったが、それはすぐに安堵へと変わる。
「直也?」
その声に驚き直也は振り返る。そこには幼馴染の姿があった。
「よかった。無事だったのか」
「直也こそ。あ、足を怪我してるの?」
直也の足の状況に気が付き足を触ろうとする。
「これくらい平気さ。それよりも、一体何が起きてるんだ?」
「……私にも分からない。突然大きな爆発が起きて大学が崩れて、急いでみんな避難したところで直也を見つけたから」
「そうか……。とにかくこの場から一刻も早く逃げよう。家族の安否を確かめるんだ」
そう言うと直也は幼馴染の手を掴んだ。
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