パン屋のある街。

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きっかけは、地方ローカルのテレビ局――コンコンテレビに持ち込んだ企画だった。 「で、俺が街を歩きながらそこの通行人や商店街の人をいじるっていう・・・」 「ふーん」 企画書とも呼べないような紙切れを見ながら、プロデューサーが呟いた。 「地元発掘っていうんですかね、『こんなところあったんだ~』みたいな感じで」 お笑い芸人目指してデビューしたものの中々芽が出ず、相方が蒸発して俺は事実上ピン芸人となった。 といっても、今の俺には芸人としての仕事はほとんどなく、バイトで繋いでるから限り無く一般人に近い。 煙たい喫煙室に、ヘビースモーカーのプロデューサー目当てで通って幾日か。 ぺーぺーの俺が持ち込んだ無茶苦茶な企画を見てもらえただけでも、ラッキーってもんだ。 背水の陣だが。 端にちょっと映る程度で良いから、仕事が欲しい・・・。 「いいよ」 「えっ」 後光が射して見えるってこういう事か? 「ちょっと待ってろ」 プロデューサーが部屋を出ていく。 その後ろ姿が見えなくなってから、ガッツポーズを取った。 なんの奇跡か分からんが、これでなんとか仕事にありつける!
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