12人が本棚に入れています
本棚に追加
/260ページ
きっかけは、地方ローカルのテレビ局――コンコンテレビに持ち込んだ企画だった。
「で、俺が街を歩きながらそこの通行人や商店街の人をいじるっていう・・・」
「ふーん」
企画書とも呼べないような紙切れを見ながら、プロデューサーが呟いた。
「地元発掘っていうんですかね、『こんなところあったんだ~』みたいな感じで」
お笑い芸人目指してデビューしたものの中々芽が出ず、相方が蒸発して俺は事実上ピン芸人となった。
といっても、今の俺には芸人としての仕事はほとんどなく、バイトで繋いでるから限り無く一般人に近い。
煙たい喫煙室に、ヘビースモーカーのプロデューサー目当てで通って幾日か。
ぺーぺーの俺が持ち込んだ無茶苦茶な企画を見てもらえただけでも、ラッキーってもんだ。
背水の陣だが。
端にちょっと映る程度で良いから、仕事が欲しい・・・。
「いいよ」
「えっ」
後光が射して見えるってこういう事か?
「ちょっと待ってろ」
プロデューサーが部屋を出ていく。
その後ろ姿が見えなくなってから、ガッツポーズを取った。
なんの奇跡か分からんが、これでなんとか仕事にありつける!
最初のコメントを投稿しよう!