パン屋のある街。

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「本当に大丈夫か?」 「うん、大丈夫。この下まで運んで行ってくれればタクシー乗れるし」 宴もたけなわ。 トシはすっかり酔っぱらって寝こけ始めるし、めぐたんは俺のベッドを占領してるしで、蘭がタクシーで帰ると言い出したのだ。 「おい、トシ、起きろよ。帰るってよ。ちょっとは自分で歩け」 「う~ん、めぐたん、もうお腹いっぱいだよ~」 俺に担がれながら、何の夢を見ているのか安易に想像できてしまう寝言をトシが呟く。 「恵君、やっぱりソレ階段から転がしといてくれる? そしたら目も覚めるでしょ」 「いやいやいや。階段下まで送らせていただきます。はい」 蘭のお怒りが発動したら、こっちまでとばっちりが来そうだ。 「それより、大変じゃないか? ウチまで来るの。安静にしてた方が良いんじゃないか?」 ようやく階段の下まで運んだトシを地面に下ろすが、一向に目覚める気配がない。 呼んであるタクシーを待ってる間、ちらりと蘭を見ると、ほんの少しお腹が膨らんでいるのが分かる。 「平気よ。ちょっとは運動もしないと体重オーバーしちゃうし。たまには息抜きしないとねー」 「へぇ」
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