パン屋のある街。

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「じゃ、またね。今度めぐみちゃん連れてウチにも遊びに来てよ」 「ああ。都合が合えば」 ほどなくしてタクシーが来ると、蘭はトシをその中に蹴って押し込み、窓からにこやかに手を振って去って行った。 明日の朝、トシが無事でいられるかどうかは考えないでおこう。 部屋に戻ると、食べ散らかした跡を蘭がしっかり片付けてくれたお陰で、いつもの俺の部屋に戻っていた。 ベッドの中にいる物体以外は。 「・・・」 すやすやという形容詞がぴったりな幼女は、俺のベッドで身動ぎせず横になっている。 色々聞き損ねた気もするし、聞いちゃマズイことも言ってたような気もするし。 明日起きたら色々聞けば良いかと考えて、さっきまで盛り上がっていたちゃぶ台の傍にごろりと横になる。 フローリングが当たって背中が痛いが、幼女と寝る趣味はないからな。 見上げた天井に、今日一日のことが高速で映っていく。 それを目で追おうとしているうちに、眠りについた。
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