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はっとして、周りを見回した。
もしかして、これドッキリとかじゃないか?
・・・いやいや。
俺みたいな三流以下芸人引っかけても「誰これ?」で終わる。
じゃ夢か?
頬を目一杯つねる。
痛い・・・ジンジンと頬が熱を持って夢でもないことが分かった。
なんか、涙出そう。
決して、痛みのせいではない。
「・・・お前、何やってんだ?」
プロデューサーがドアを開けて、怪訝な顔でこちらを見ている。
「あの、最近親知らず生えてきたみたいで・・・アイタタ」
右の頬に手を当てて誤魔化す。
まさか、夢かどうか確かめてました、なんていい年した大の男が言えるわけがない。
中に入ってきたプロデューサーは、机の上にビデオカメラを載せた。
「これで一本撮ってきてみろ。それ見て考えてやる」
ビデオカメラは、俺が小学校とか幼稚園とかの頃に親父が使っていたような、テープ式のめちゃめちゃ古そうなホームビデオカメラ。
「カメラマンは・・・」
「自分で撮るんだよ」
壊したら弁償な、というありがたい言葉を残してプロデューサーは部屋を去った。
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