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「うーん。麗也さん、そのネクタイ止めて、こっちにしない?」
バタバタと吉村が世話を焼く姿を肴に、ワインを揺らす。
何でも飲んでいいと言われて、一番年数が若いワインを開けて注ぐ。
この五年、本当に父はずっと吉村の世話になっていたらしく二人のやりとりはまるで夫婦のようだった。
「いいよ、拓海くん。そんな派手なネクタイ恥ずかしいし」
「……俺はその熊柄のネクタイの方が恥ずかしいよ」
そう言って、父のネクタイを結ぶと、目を伏せて父は大人しくその指を見つめている。
――まさかのまさかすぎて怖くて聞けないけど。
まさか、本当にこの二人……。
「よし。麗也さんはもう動かないで。大人しくジュースでも飲んでて」
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