side 愁也

3/13
前へ
/38ページ
次へ
甲斐甲斐しく椅子を引いて父を座らせると、今度は俺のワインを奪う。 「ほら、今度はお前。 今日の主役だろうが」 そう言うと眼鏡を奪われ、髪をくしゃくしゃと掻き回される。 「うん。お前はオールバックは似合わねぇな。軽く流すだけにするか」 「……好きにしてくれ」 そう投げやりに返すと、うきうきとワックスを手に掬い取り出すと手のひらに広げだした。 こいつの世話焼きは今に始まった事ではないにしろ、なんだか落ち着かない。 それに今日のパーティーはあのビルができた事の祝賀会だから俺は悪までも来賓。 父もだ。 「なんで瀬渡も今日来るの?」 ついそう口から溢れると、吉村は愉快そうに言う。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加