side 愁也

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五年前から、こうも状況が変わるとは思わなかった。 やはり渉は俺が憎いんだ。 憎いだけなんだ。 そう思うと、もっと何度も殴れば良かった。 といってもアイツは殴られても平気で笑っていたけれど。 旅行者向けに作られたブランドショップのビルが無事にオープンして半年。 やっと向こうでの仕事も片付き、父さんの事務所に戻るだけだったのに。 この五年で渉は変わらなかった。ただそれだけ。 いや地位もなく力だけで俺を監禁していた頃とは違う。 支配するだけの地位も築きあげていたのだから質が悪い。 「……っと遅れてしまう」 俺は空港のトイレに紙袋を持って入ると、急いで着替えて吉村の迎えを待った。
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