side 渉

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ああ、兄さんが上手に忘れてくれていた。 それは兄さんに殴られたその足で、真宮事務所に向かっていた時だった。 綺麗な、凜とした女性を見た時、すぐに兄さんだと分かった。 パリッとしたスーツを着こなし、白く艶かしい足をスカートから惜しみもなくさらけ出し気丈にも男に殴りかっていた。 兄さんはそのまま、その男の腕を後ろに捻る。 「現行犯です。そうやっていつも俺の部下にセクハラしてたんですね」 「『俺』……?」 「はい。俺が真宮の社長ですけど」 兄さんは長い綺麗な髪を剥がすと、その男を吉村の方へ突き飛ばす。 「大事なクライアントですから、よろしくお願いいたしますね」 「ああ」 冷たい声で吉村がそう言うと車に乗せる。
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