side 渉

3/6
前へ
/38ページ
次へ
「女装が平気って事は、もう大丈夫だよね」 吉村の車を見送る兄さんの背後に立つが振り返らない。 「なんで俺の前に、……いや、真宮事務所の前に現れたんですか?」 「さぁ。兄さんに会いたかったからじゃない?」 夜の真宮事務所はしぃんと静まり返り、外から見ても真っ暗だった。 一階にあったコンビニは無くなり、代わりに24時間のドラックストアが入っている。 「でも俺はもうお前の兄でも何でもないでしょ? 『瀬渡』さん?」 「……怒ってるね」 フッと笑うと、整った切れ長の目がキッと上に上がる。 「やっと忘れてたのに。やっと乗り越えようとしていたのに!! お前が瀬渡の養子に入り、真宮事務所の仕事を奪っていくなんて思わなかった!!」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加