side 渉

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「――だってDNA検査もしたし。俺、瀬渡の子どもだった」 「は?」 「兄さんをあんな事した瀬渡こそが俺の兄さんだったなんて、笑えるだろ?」 乾いた笑みが溢れる。 だったらこの先、兄さんの側に近づけば、 兄さんはあの事件を思い出してしまうだろ? 俺なんて更に憎くなるだろ? だったら、俺は憎まれたまま兄さんの前にはもう現れない。 あの事件依頼、兄さんが女性のスカートやら長い髪に恐怖したり、閉所が駄目だと聞いていたけれど。 五年も経てばとっくに忘れられてたんだから。 「世界で一番兄さんが好きだよ。やっぱ愛してるみたい。……笑えるよな、本当に」 だから憎まれて嫌われるぐらいなら、 先に嫌われるよう仕向けたかっただけだ。
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