一、幼馴染み

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一、幼馴染み

『おれとけっこんしようよ。みゆき』 初めて告白されたのは四才のとき。 当時、太一と奏と三人でよく遊んでいた。 太一が幼稚園をお休みしている時に、そう奏が言ったんだけど、 私は、太一が居ない時の隙を付いて言ってきた奏にちょっとだけズルイなって子ども心に思った。 『わたしはたいちゃんがすきなの。かなはみんなにやさしいけど、たいちゃんはわたしにだけやさしいの』 これが奏にとって初めての失恋だと豪語するけれど、惚れやすくてすぐに誰にでも告る奏には、いっぱいあるうちの、たった一つに過ぎない。 『かながわたしとけっこんしたいって。でもわたしはたいちゃんがいいな』 お迎えを一緒に待っていた時、そう言った。 でも、幼稚園児のくせに落ちついた眼差しで、確かたいちゃんは、私を諭したと思う。 奏は誰にでも優しいんじゃなくて周りを良く見て、世話をやくリーダーみたいなやつだからだよって。 私の告白なんてきっと、覚えてもないんだろうな。 私たちは、あの時から止まったままなんだろう。
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