第1章

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*** 「ん」 「あ……ありがと」 落ち着きを取り戻した水野に、自動販売機で買ってきた飲み物を渡す。 それを受け取りながら、水野がくすりと笑う。 「なんか、ホント妬けるね」 「?」 「これ。 彼女の好み?」 渡したペットボトルを俺に見せる。 「あ、」 カオルが好きな、濃厚な果汁がウリのそれ。 つい癖で、自分のブラックコーヒーと一緒に無意識に選んでいたようで。 言葉に詰まった。 「だよねー、こーゆーの冴島君の好みじゃないもん。 買ってあげてるんだぁ」 さっきまでの殺伐とした雰囲気が、まるで憑き物が落ちたようにすっきりと消え去っていた。 化粧っ気もなくなっていたけど、その顔で笑う水野の方が可愛いと思った。 「『上等な女』かぁ………。 言われてみたいもんだ。 ドはまりしてんの、冴島君のほうなんだねぇ」 「うるさいヨ」 隣に腰を下ろし、箱からタバコを取り出していると 「一本ちょうだい!」 水野の右手が差し出された。 「…………吸うの?」 「吸うよ、眼中にない男の前では」 にっこり笑うと。 戸惑う俺の指からサッサと抜き取っていった。
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