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…声が聞こえる。
紛れもなく、人が恐怖し絶望に嘆いている叫び声だ。
そしてそれを掻き消す狂ったような笑い声。
硝煙の臭いと血の臭いが充満しているこの場所で。
私は、今まさに殺されようとしていた。
思えば平民として生まれ、ただただ日々を消化するような何も面白くない人生で。
「…つまらなかったなぁ。」
そう私は呟き、目をつぶった。
目の前に迫り来る、赤い刀から目を背けるように。
次に目を開けた時、そこは天国だと思っていた。
だけど眼前に広がっていたのは死後の世界などではなく。
目の前にあったのは
「…え。」
赤く染まった刀などではなく、大きな背中。
「…無事か?」
返り血を拭い、こちらを向くその男は。
大柄で、片目には一筋の傷。
ボロボロの服に返り血で真っ赤になっているそんな姿なのに。
一目で分かった。
彼はこの世界じゃ、名の知れた殺人鬼なのに。
「……ありがとう、ございます。」
私には、救世主に見えたんだ。
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