とある殺人鬼が生まれた理由と少女の話

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※夏生視点 陽の発言に、ほとんどの人が驚き刀を抜く。 陽はそんなのは意に介さず、名前を呼んだ人の反応を待っていた。 藤吉郎、と呼ばれた男の人は未だに不敵な笑みを浮かべている。 口元に手を当ててこちらを品定めするかのような目でずっと見つめていた。 沈黙が支配する空間を破ったのはその男の口から発せられた言葉だった。 「…この人達、牢に入れといて。不審者だから。」 「「「「御意に!!」」」」 一瞬で刀を構えた数人の男達に囲まれる。 …あれ、どうしてこんな状況になるんだろう…? 陽の呼び方からして知り合いかな、と思ったんだけど…。 心配になり陽の方を見る。 「…あれ?何で?何で!?」 陽にとっても想定外だったらしい。 当てが外れたのか陽にしては珍しく焦りまくっている。 そして抵抗する間もなく…。 「…捕まっ、ちゃった…。」 縄で腕を縛られ、身動きが取れなくなる。 陽でさえ不可避だったのだから私なんて当然捕まるに決まってる。 「秀吉様。何故、この男は秀吉様の旧名を…。」 「あぁ、別に気にしなくてもいいよ。取り敢えず早く連行してあげて。」 今度は秀吉、と呼ばれた男が淡々と事を進める。 陽は未だに状況の整理が出来ないらしく、呆然としている。 「…あれ、あいつ藤吉郎じゃないの…?おっかしいなぁ、俺の記憶違いか…?」 「おら、さっさと歩け!!ぶつくさ言ってないで!」 …うーん、どうしたものか。こんな状況に陥ったことがないので対処法が全く分からない。 歩かされている時に秀吉様、と呼ばれている人を見てみる。 …何故か満面の笑みを向けられた。少し寒気がしたのは気のせいだと信じたい。 眼を開けてるんだか開けてないんだか分からない糸目が特徴的な顔をしていた。 だが、遠くからでもよく分かるくらい美形なのは間違いない。 「…や…と帰……き…し…か。」 何か喋ったように感じたが、流石に聞き取れなかった。 そんなことより今は…。 「…ねぇ、陽、どうするの…?」 「…分からん。」 この訳分からない状況をどうするかが問題なのは言うまでもなかった。
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